【特集コラム⑧】ペットと同行避難について ~同行避難先は実際どうなっている?~

2018/09/28

頻発している自然災害。ペットと共に避難所までたどり着いたが、その先の避難生活ってどのようなものなのでしょう。

東日本大震災以降、各自治体では地域防災計画を制定し、避難所となる施設(指定避難所)を公表しています。あまり知られていませんが、避難所の運営は、施設の責任者と、避難してきた方たちの自治で運営されることとなっています。ペットの飼養義務がある飼い主が、避難生活を行う規則と環境例を挙げてみましょう。

ガイドラインでは

■避難所でのペット管理
避難所運営のガイドライン(平成28年4月 内閣府)では、様々な人が共同生活する避難所で、飼い主はペットの臭いや鳴き声、毛の飛散など、避難所の衛生管理に配慮する必要がある事を前提とし、『飼い主が責任をもって避難所でペットを飼育するための居場所の確保や、ゲージ等を用意するなど、具体的な対応を検討しましょう。』と記載されています。また事前にペット同伴避難のルールを決めておくことが重要との記載もあります。要約すると、飼い主が日頃からしっかりと管理しているペットであれば、避難所での居場所を確保するよう配慮をしましょう、となっています。

■同行避難の意義と定義
人とペットの災害対策ガイドライン(平成30年3月 環境省)では、同行避難の意義を『動物愛護の観点のみならず、飼い主である被災者の心のケアの観点からも重要』としています。
また、放浪状態となった犬猫の繁殖や、置き去りとなったペットの管理に、災害対応するための人員を割くことは、被災地の復旧・復興に支障を及ぼすことも過去の事例から問題視されています。また『同行避難・同伴避難(という言葉)は、ペットを同行し移動を伴う避難行動をすることを指し、避難所等において飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではない』と定義しています。

ペット動物の避難生活における飼養環境例

災害時は人命が最優先となります。また避難所は様々な方が利用する施設であるため、当然のことながら飼い主はペット動物の存在に対して配慮が必要となります。避難生活を送る際、ペット動物を飼養する環境として以下のような状況があります。

■避難所での飼養
避難所の敷地内に飼養施設が設置されている場合、飼い主が他の飼い主と協力して施設を維持することが出来ます。多くの利用者がいる場合、飼養施設を別棟に設置して運営するケースが一般的となっています。
熊本地震の例では、指定避難所である益城町総合体育館のテニスコート脇の屋根付きスペースにプレハブ2棟(犬用と猫用)を設置し、避難所で生活している飼い主が無償で利用できる施設として運用されました。運営はNPO団体に委託され、ドッグトレーナーなどの人員が常駐し、支援物資もここから飼い主に分配されました。東日本大震災の事例でも、郡山市の避難所で同様の施設をペット関連企業が協働して設置した例もありました。

また、避難所内でペットと同居できる避難所の例もあります。東日本大震災時には、新潟県の一部避難所で同居型の避難所が運用されていました。ただし同居できるスペースは一般の避難者とは別に、廊下の一部や体育倉庫など限られた場所であったため、飼い主の生活環境としては快適ではなかったようです。
直近では西日本豪雨による、岡山県総社市の避難所が話題となっています。市長自らが被災者に呼びかけを行い、市庁舎など3か所の避難所を、ペットと同居できる避難所として運用しました。これは非常に恵まれたケースであると言えます。

また発災時にはペット同居可として開設した避難所で、利用者が増えるにつれペットを屋外へと移動しての運用となる例も少なくありません。
避難所での飼養は飼い主が責任をもって管理する必要がありますが、家族であるペットの安全な環境を自らが保つことが出来るため、飼い主が安心して避難生活を送ることが出来ます。

■自宅での飼養
自宅の被災度が少ない場合、一緒に自宅にとどまる在宅避難と、飼い主は避難所で生活し、自宅で飼養を行う2つの方法があります。
在宅避難の場合、ペットとの生活は従来通りですが、災害の情報や支援物資などは避難所に集積されるため、飼い主への支援が受け辛くなるデメリットがあります。
ペットのみ自宅で使用する場合、飼い主が自宅へ通うための労力や、二次被害が発生した場合の安全確保などのデメリットが生じてしまいます。
他の被災者への配慮などは出来ますが、ペットと飼い主自身の安心な避難生活の面では、問題が生じてしまう事例です。

■車中での飼養
自宅での避難と同様、一緒に車中で避難生活を送るケースと、飼い主は避難所、ペットの飼養のみ車中で行うケースがあります。メリットデメリットは自宅での避難生活と同様ですが、狭い環境での生活が飼い主の健康を損なう事例、特にエコノミー症候群による死亡例などもあるため、車中で同居する避難は推奨されていません。一方車中での飼養に関しては避難所敷地内に駐車スペースが多い場合、近い環境で管理が出来るというメリットもあります。

■施設などに預ける
近年では一番効果的と言われるケースとして、飼い主が生活を立てなおすまでの期間、専用の施設や親戚・友人へペット動物を預けるという方法です。避難所での飼養が困難であったり、飼い主の事情で飼養が困難な場合に特に有効です。
災害救助法が適応される大きな被災地では、自治体と地域獣医師会により動物救護本部が設置されることとなっています。動物救護本部では、需要が多いと判断された場合ペットの一時預かり支援を行います。これは動物愛護センターなど行政の動物管理施設や動物病院、近隣のペット事業者施設などで、飼い主が生活の立て直しを行うまでの期間ペットの飼養を請け負うサービスです。施設によって有償無償はありますが、概ね3か月を目途に支援が行われます。飼い主が飼養の継続が困難な状況となってしまった場合、新しい飼い主を探すといった支援が行われる場合もあります。
ペットの専門家やペットが慣れている環境で管理を行い、飼い主はその間に生活の立て直しを行う。余分な施設建設やそのための人員や予算を、災害現場の復旧に充てられるなど、メリットが多いと言われています。

郡山市南一丁目仮設住宅の飼養施設

ペットと過ごせる総社市庁舎内の避難所
(産経WEST 2018.7.17掲載記事より)

まとめ

社会における災害対応は人命が最優先として行われます。そのため災害時のペット動物に対する支援は、必要という認識はありますが、飼い主自らの自助努力として位置づけられています。
常日頃から適正な飼養と管理を行い、しつけや健康管理、感染症対策を行っておくことが出来ない場合、避難所での受け入れや一時預かりなどの支援を受けることは望めません。

どんな時でも家族であるペットを守るため、飼い主として今一度、何が必要かを考えてみてはいかがでしょうか。


株式会社ジーパウ 代表取締役社長/動物福祉活動家/防災士
成田 司

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