ペット産業・市場ニュース » 特集記事一覧 » 特集:マイクロチップの普及促進は有意義なペット社会を実現する

特集

小川 泰男(おがわ やすお)

株式会社共立商会 代表取締役

日本ペット用品工業会 理事

ペットと飼い主がより良い生活を送れるように、国内外から最適な動物医薬品・動物用医療機器を開発・輸入・販売。

さらに、獣医療の領域だけでなく、専門店向けにフードとサプリメントなどの商品開発・販売。

株式会社共立商会ホームページ
http://www.kyoritsu-shokai.com/

獣医師お役立ち掲示板
http://www.fosteen.com/



生田目 康道(なまため やすみち)
(株)JPR代表取締役

日本大学 獣医学科卒業。 
獣医師・中小企業診断士の両眼で、ペットビジネスをトータルサポートする。動物病院経営事業の実績に基づいた、新規参入・新規事業コンサルティング動物病院/動物医療分野ビジネスサポート市場調査・マーケティングリサーチペット関連商品/サービスの営業支援を行う。

AVIDマイクロチップを平成10年から取り扱っています

JPR代表 生田目康道(以下生田目)ペットの生体認識のツールとしてのマイクロチップの存在は私が獣医学生だったころから、そいうものがあると話を聞いておりました。しかし、普及についてはいつごろになるんだろうかというイメージでしたが、この数年でマイクロチップの普及が少しは浸透してきたのかなと感じています。 そこで、今回はマイクロチップを実際に取扱われている株式会社共立商会の小川泰男社長にマイクロチップビジネスの現況と今後の見通しをうかがってみたいと思います。 共立商会さんでは、マイクロチップをいつごろから取扱っていらっしゃるのでしょうか?

株式会社共立商会 小川泰男社長(以下小川):平成10年にAVIDマイクロインジェクターII(ISO規格)が動物用医療用具としての許可が下りました。このAVIDマイクロチップインジェクターIIは、特徴として、移動防止処置がされており、「安全性が高く動物に苦痛を与えることなく注入ができる」ということで非常にいいなと感じ、すぐ弊社でこのAVID社製のマイクロチップの扱いを始めました。

マイクロチップは長さ12mm、直径2mmの大きさです

生田目:マイクロチップは最近では飼い主向けの雑誌や動物病院にパンフレットが置いてあるので、ますます認知が進んでいると思いますが、確認をする意味で簡単に取り扱いをご説明いただけますか?

小川:マイクロチップは長さ12mm、直径2mmのガラス管に超小型集積回路を封入した体内注入型の標識器具になっており、マイクロチップを注射器様のマイクロチップ挿入インジェクターで動物の皮下(犬・猫の場合背側頚部皮下)に注入します。超小型集積回路には固有の体内識別番号(15桁の数字)が書き込まれていて、読取機で個体識別番号を読み取ることによって、個体の識別が可能になります。

マイクロチップを埋め込む場所は当然決まっています。好きなところに埋め込むようにしていると、読取る時に問題が起きてしまいます。例えば、マイクロチップを装着していることが明確であれば問題ないですが、迷子等でマイクロチップが装着されているかどうかを調べるときに、決まっている場所のみを調べることによって早急に判断することができるようにするためです。

マイクロチップは注射器状のもので注入するわけですが、無資格の人間が行うと、血管や神経、筋肉にダメージを与えてしまうことも考えられます。従い、埋め込みは獣医師にやってもらいます。

動物病院で、マイクロチップの装着をした場合。品種・状況・その他により異なりますが、4000円〜10,000円程度が多いようです。この他にデータ登録料として1000円を別に管理団体に支払う場合があります。(マイクロチップの登録料はマイクロチップ代に含まれていることもあります)

マイクロチップのデータはAIPOが管理しています

生田目:マイクロチップを実際に注入した際に、マイクロチップの認識情報と飼い主さんの情報の登録内容を管理する機関が必要になると思いますが、どのように運営をされているのでしょうか?

小川:マイクロチップに記憶されているデータは15桁の識別番号です。注入されている動物のデータや飼い主のデータがマイクロチップに記録されているわけではありませんので、15桁の数字のデータに紐つくマイクロチップを注入した動物・動物の飼い主の住所・氏名をデータベースに登録しておく必要があります。

登録したマイクロチップの15桁の識別番号・動物の種類や飼い主の住所・氏名などのデータは、AIPOという機関で管理しています。AIPOはAnimal ID Promotion Organization(動物ID普及推進会議)の略称です。マイクロチップによる動物の個体識別の普及推進とデータ管理を行うため、平成14年に(社)日本獣医師会、(財)日本動物愛護協会、(社)日本動物福祉協会、(社)日本愛玩動物協会、(社)日本動物保護管理協会の5団体からの構成で組織された機関です。

登録の方法の様式には数種あります。そのうちのひとつの方法は、動物病院で注入した際に、申請用紙に獣医師が所定の内容を記載します。申請書に添付されている手数料の振込用紙にて支払い後、申請用紙と領収書をAIPOに送付していただくような形になります。

引越しなどの理由で、登録の内容が変わった場合はAIPOに変更届を提出します。変更の場合、料金は不要です。

マイクロチップで迷子を飼い主さんのもとへ

生田目:マイクロチップには色々な使い道があると思いますが、まずは迷子ペットの飼い主探しには、有効な手段になると思いますが、どうでしょうか?

小川:迷子札やタトゥーと異なり、マイクロチップは一度注入すれば、生涯外れたり消失したりすることはないので、大変有効な動物の個体識別方法です。通常室内で飼っているネコを掃除の際に逃がしてしまった時や、地震や火災などの際に保護された時に身元の確認が、リーダーで認識番号を読み取り、その認識番号をAIPOの検索システムにより、迷子のペットの情報がすぐに取得できます。

データベースには動物の種類や飼い主の住所・氏名・電話番号などの情報が登録されているため、飼い主に連絡をとり、飼い主の元にペットを戻すことができます。

マイクロチップは一度注入すれば、体の中に残ったままになります。そのことにより、万が一盗難された場合にも標識番号の変更や改ざん、消去ができないので、確実な身元保証が可能で、飼い主からしてみれば、自分の家の子であることを簡単に証明することができます。

このほかにも特定動物(危険動物)の個体管理・特定外来生物の飼養許可の証明に使用されています。また、海外から輸入される犬・猫などの場合、マイクロチップによる個体識別が日本到着時の係留時期間を短くする条件のひとつとなっています。

マイクロチップの今後はどうなりますか?

生田目:迷子ペットの飼い主探しに有効なことはわかりましたが、マイクロチップの他の効能や活用はどうでしょうか?

小川:マイクロチップは注入・登録時に費用はかかりますが、一度注入・登録を行えばその後の費用は一切なく、ペットの生涯を通じて有効になります。

固体の識別が簡単に行えることにより、簡単に飼い主を探し出すこともできることから、飼い主としての責任が明確になるため、捨て犬・捨て猫の防止や場合によっては虐待の防止にもつながります。

動物医療保険の個体証明や血統管理、動物病院における電子カルテにも応用できるなどマイクロチップの使用が一般化されると、ペットビジネス全体で様々なサービスに活用でき、効率化から業務コストを引き下げることができるようになると思います。

生田目:飼い主さんからすると、マイクロチップを自費で支払ってまで注入するメリットが感じられる普及環境作りがまだまだできていないと思いますが、この点はどうでしょうか。

小川:近年ペットの飼い主のマイクロチップ認知度も高まり、マイクロチップを取扱いされている動物病院も増えてきました。又、迷子を保護する各自治体の関係部署で、マイクロチップ読取機を設置する体制も整いつつあり、状況が進歩してきたことをちゃんと告知するようにもなっています。

社会全体でみんながメリットを受けることを解っていただくため、関係者は活動しています。鶏と卵ですが、マイクロチップの普及が促進すれば、マイクロチップのより有用な使い道が開発され、更に普及につながります。ですから、マイクロチップの有効活用は、捨て犬をするような無責任な飼い主さんを減らすモラル向上とペットビジネスの効率化を必ずもたらし、社会的にとても有意義な手段だと信じています。

お忙しい中、ありがとうございました。