ペット産業・市場ニュース » 特集記事一覧 » 特集:ペット関連法制度、まだまだ存在する諸問題を浚う!

特集

今やペット関連法制度環境の変化はペットビジネスにも大きな変化をもたらします。関連法制度の遵守は不可欠の事ですが、ペット関連法制度は不変のものごとでは決してありません。ペット産業・市場の拡大発展、成熟化に伴い、古く、実態に合っていないものは、制度化されたり、改正されたりしていくことは当然のことです。ペット関連法制度は、まだまだ制度化・改正されていかなければならないとすれば、それはどういうポイントなのか知っておくことは、将来のビジネストレンドを予測するために必須です。

そのために、今回の特集は、ペットビジネスのコンサルティング会社であるJPR社とペット関連の法制度に詳しい動物法務協議会の代表者とで座談会を行ない、ペット関連法制度にまだまだ存在する諸問題をひと浚する議論を行いました。その内容は、動物愛護管理法から動物医療分野、ペットフードの安全性など多岐に亘っており、連載で順次ご紹介します。

伊藤  浩(いとう ひろし)

行政書士 伊藤浩行政書士事務所所長 動物法務協議会代表
動物法務協議会の詳細はこちら:
http://animallaw.at.infoseek.co.jp/

伊藤浩行政書士事務所はこちら:
http://www.itoh-office.jp/

井田竜馬(いだ りょうま)

行政書士 井田竜馬行政書士事務所所長 動物法務協議会関西支部長
井田竜馬行政書士事務所こちら:
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/ryoma/

生田目康道(なまため やすみち)

株式会社JPR代表取締役社長

服部憲一 (はっとり けんいち)

株式会社JPR取締役

その3 動物医療分野では法制度にどんな問題があるのか?

服部:次は動物医療分野に於いてなんですが、この分野も今や法律と獣医療の現場がそぐわない点がたくさんあると思うのですが、例えば、どこの動物病院でも動物看護師はいますし、多くの専門学校が動物看護師の養成課程を持っていますが、この資格があいまいなままでいいでしょうか? 動物看護師もある程度医療に係るわけですから、国家資格でもない法的根拠のない資格となっていることには問題があると思うのですが。

井田:なぜ、動物看護師に法的根拠がないのか。 それは獣医師法にそのような規定がないためです。 獣医師という職業は、もともと馬や牛などの産業動物の診療を行うために制度化されましたので、今でもそれが獣医師法をはじめとする制度の根底に流れています。 大学のカリキュラムを見てみるとそれらが実感できると思います。もちろんそれが悪いわけではありませんが、これだけ犬や猫をはじめとするペットとしての動物の診療ニーズが高くなってくるとギャップが出てきているのも事実だと想います。つまり、産業動物診療であれば獣医師本人が馬や牛のいる厩舎や牧場等に出向いて診療を行うことが多いため、基本的に獣医師がいれば完結します。制度的にも看護職や補助職というものが存在する必要がなかったのですね。それで今もそのままにされてしまっているのです。

伊藤:現在の動物医療の中心は動物病院での犬や猫を中心とした治療になるわけですから、補助職や看護職が必要となってくるのは当然です。 やる気のある看護師さんからしてみれば、法的根拠のないためにどこまでやっていいのか判断がつかない。 獣医師からしてみれば、法的根拠のない者を雇い治療の手伝いをしてもらう関係になっているため、全責任が獣医師に懸かっており、大変リスクが大きい状況になっています。

生田目:人間の医療と同様に、やはり看護師がどこまで行っていいのかのガイドラインは切実に必要になっていると思います。 この制度化は動物病院経営の質の向上にもつながる側面も持っていますが、現状はどうなっているのでしょうか。

井田:日本獣医師会と各動物看護系団体で、制度化に向けて話し合っていることは事実です。どうも看護職ではなく、あくまで補助職として、獣医師のアシスタントとしての位置づけで国家資格制度にしようという話になっていると聞いてます。 飼主さんからしてみれば、看護師さんは受付業務を行い、獣医師のサポートをしているに過ぎないと思うことからそのようなイメージがあるのかもしれません。

生田目:動物医療の現場では看護師が手術の補助を行い、入院している動物の世話は看護師が行っているのが実態です。 入院中の動物にしてみれば看護師さんが飼主の変わりになっているわけです。 世話をしているが故に、動物たちの容態変化についても看護師の方が獣医師に比べて見た目の変化に対しては敏感に感じ取っているケースもあり、その声が獣医師の診療方針に大きく影響を与えていると言え、今や現代医療の観点からはチーム医療の一員して、質の高い医療には欠かせないポジションです。

伊藤:獣医師法が牛や馬などの畜産動物だけを想定して運用されていること自体が、ここでも制度疲労を起こしていると言えます。犬猫等のペット獣医師やペット看護師という制度を、新たに作るなどの見直しが急務な時期ではないかと思います。

井田:先ほど話をしました補助職としての制度化の動きなのですが、看護については各団体ごとにレベルアップをしましょう、獣医療補助に絞って資格化を目指しましょうということなのです。

服部:つまりそれは看護と医療補助を別に行うということなのですか?

井田:まず動物看護というのはそもそも何であるか?という動物看護論が人間と違い、確立されているわけではないので、そこまで議論していると、資格化への道筋がいつまでもできない。だから、取り急ぎ医療の補助から固めてしまおうというのが考えのようです。

服部:なるほど、現在動物看護師として仕事に就いている者や学んでいるものも一先ず診療補助の資格をとることにして、お墨付きがつくことで、制度創設を図るということですね。

井田:そうです。 看護まで含めて考えるとどうしてもまとめるために時間がかかってしまうので、何らかのお墨付きが早急に必要な状態である動物医療現場との関係から先に診療補助からまとめていくのが、ベストではないがベターというのが推進者の考えです。

生田目:ただ、あまり議論が公になっていないので、まだ暫定的とは言えとりあえずの制度が本当にこれでいいのか、わからないところがあると思うのです。 今の資格からの切り替えの整合性どうとっていくかなど詳細が知りたいところです。

服部:獣医師法が畜産動物を前提にできているという話が先ほどでましたが、薬品に於いても同じようなことが言えます。農協が農家に売るために動物薬を売ることは認められている場合が多いです。

というのも動物薬販売業は都道府県知事からの許可によるもので、農協であれば役所としても許可を出しやすいといえます。しかし、ペット向けの薬品については、現状動物病院で診療を受けた上で、処方されているばかりで、一般には市販がされていません。なぜ、ペット向けは一般の市販薬はだめなのか、法的制度のバックボーンが見えないのですが、何か理由があるのでしょうか?

伊藤:動物医薬品の扱いについて監督している省庁は農林水産省になるわけですが、ここでも畜産農政を想定した体制のままなのですね。 一方、人間用の医薬品は厚生労働省管轄になっていて、一般市販薬の販売制度が定着しています。しかし、ペットについては、それを推進するところがない。 ペットの一般市販薬のリスク管理を今後どの官庁が担うかなどで、しりごみしがちで、なるたけ今のままを変えたくないと思っているのではと疑いたくなります。 薬の問題だけでなく、他のペット関連の法的問題を絡めて、ペット行政に対する関連省庁の一本化を考えるべき時期に来ているのかもしれません。

服部:動物病院の設置に関する用途規制についての問題ですが、ペットクリニックとなっている動物病院は今や住宅地にあるものだと思いますが、土地の用途地域において第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域では動物病院を建設することはできなくなっており、これは問題だと思いますが。

伊藤:動物病院は土地の用途地域における建築基準に該当するものが存在しないため、基本的には畜舎と同じであると解釈されているのです。 その為、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域においての建築ができないと市町村の建築課は判断してしまっているようです。 しかし、現在の状況を考えてみても、この規制は撤廃する必要があると思います。

服部:この問題は、獣医師会が声を上げる問題だと思うのですが、言わないところをみると、既に開業してしまった獣医師が、同業者の新規開業を防ぐ既得権益みたいなとらえ方をしてるとしか思えないのですが、いいのでしょうか。

井田:そのことはトリミングショップでも同じようなことが言えます。 人の美容室はOKなのに動物用は駄目であると判断されてしまうわけです。 ある自治体に人間の美容店もトリミングショップも毛を切り、洗うことには変わりはないのではないかと言いましたが、動物は想定しておりませんということで、許可が下りなかった事があります。

伊藤:動物を扱うから、騒音・匂いなどが問題でならば、建築基準に基づくもので制限するのではなく、騒音(騒音防止法)や・匂い(悪臭防止法)での規制を行うべきであると思います。

服部:薬周りの話に戻りますと、最近ではフィラリア薬などを個人輸入している話を聞くと違法ではないのですか?

伊藤:個人輸入の場合は個人の責任で行うため、すべてが違法だとも言い切れません。 しかし、実際にミクロフィラリアが体内にいる際にフィラリア薬を飲ませてしまい、血管を詰まらせてしまった事例があります。 そのため、違法性はないですが、野放しで良いとは思えません。

服部:次に医療過誤の問題ですが、裁判所で認められているのが数件あるようです。免許の剥奪などの処分は聞かないのですが、それはどうなのでしょうか?

伊藤:獣医師法は元々動物の診療よりも公衆衛生の保持に重きを置いていますよね。そのため、医療過誤を起こしても、公衆衛生を損なうわけではないので、罰則を行うというのは難しいと考えてもおかしくないわけです。

井田:そういうことで言えば、鳥インフルエンザの発生を届け出なかった獣医師が処罰の対象となっているのが、その点を示していると思われます。

伊藤:獣医師法がペットの診療を前提にしているわけではありませんので、その点も含めて改正が必要ではないかと思われます。

服部:このテーマでの最後にちょっとお聞きしたいんですが、そもそも社団法人日本獣医師会という、獣医師さんたちの集まりがあり、行政に対する相当な圧力団体、またはペット業界のリーダーシップ的団体だと思われるんですが、その活動は実際はどうなんでしょうか?

生田目:日本獣医師会のホームページ等でも言っていますが、獣医師の活動分野は『農林水産』『公衆衛生』『バイオメディカル』『海外関係』『動物愛護関係分野』『野生動物関係分野』『小動物臨床分野』と多岐にわたります。だから獣医師の職域がペットだけでないことと同じように日本獣医師会の活動範囲も当然ペットだけではありません。その中でペット分野における活動については、地域ごとに濃淡があるというのが現状だと思います。獣医師会の単位で積極的な活動を行っている地域もあれば、あまりまとまりがなく、狂犬病の集合注射が主な年間活動になっている地域もありますね。本来は、地域単位でのペット関連の周辺サービスも含めたリーダーシップを発揮していくことべきなんだと思いますが、若い獣医師たちが主導的に活動に関与していける雰囲気も時代的に必要なんでしょうね。

伊藤:ペットの領域においてはある意味で獣医療の総本山である獣医師会にイニシアティブを取っていただきたいところが多くあるのです。獣医療は元より、ブリーディングにおける先天性疾患に関する指導であったり、人畜共通感染症に関する提言であったり、ペット共生住宅に関する協働であったりです。獣医師会には大いに期待しています。

井田:獣医学・獣医療が必要とされるシチュエーションは今後ますます多様化していくでしょうから、獣医師や獣医師会に対する世間の期待は更に大きいものになっていくと思います。
様々な取り組みをどんどんアピールしていっていただきたいですし、やはり、人医療制度をそのまま参考にするのは難しいかもしれませんが看護師をはじめとするコ・メディカルのように、獣医師以外で獣医療分野に関わる方々の資格創設などについても積極的に検討・提言していって頂きたいと思います。そうなれば獣医師は診療に集中できますしスタッフも一定水準以上が担保されてきますので、動物病院運営にとっても私を含む一般飼い主にとっても大きなメリットがあるはずです。今後の獣医師会の活動に期待しています。

【前回掲載タイトル】

■その1 改正動物愛護管理法 届出から登録制への実効は?
■その2 改正動物愛護管理法でまだ積み残されている課題とは?

【次回の連載予定】
■その4 その他、ペット関連事業をめぐる法制度と諸問題

行政書士『無料ペットよろず相談会』を行なっております。

詳細はこちら

JPRペット産業市場ニュース
神奈川県横浜市中区弥生町2-15-1
ストークタワー大通り公園V5階
TEL:045-232-9230
FAX:045-232-9234
営業務時間:土日祝祭日を除く
10:00 - 18:00
お問い合わせ