【特集コラム①】犬の歯の基礎知識とデンタルケアについて

2018/07/20

犬の歯は全部で何本あるか、パッと言えますか?
今はさまざまなペット用のデンタルグッズがありますが、それらを使った正しい口腔ケア、出来ていますか?

犬の歯について

■犬の乳歯と永久歯
犬の歯には脱落性の乳歯(子供の歯)と非脱落性の永久歯(大人の歯)の2種類があります。
生まれたばかりの子犬には歯は生えていません。乳歯は永久歯に比べて歯根部が浅く、抜けやすい状態になっており、生後1か月くらいから生え始め、約2~3か月で28本生えそろいます。そして、生後3~7か月の間に徐々に永久歯に生え変わっていき、最終的に42本生えそろいます。


■犬の歯の数
口先から順に、切歯(I)、犬歯(C)、前臼歯(P)、後臼歯(M)の4種類それぞれの歯の数を表したものを歯式といいます。
分数それぞれの上段は上顎、下段は下顎を表します。これらは片側の歯だけなので、歯の合計はその倍の数になります。

<歯式>
(乳歯)
 【(I)3/3 (C)1/1 (P)3/3 】×2=28
  ※乳歯の場合、後臼歯は生えません
(永久歯)
 【(I)3/3 (C)1/1 (P)4/4 (M)2/3】×2=42


■歯の種類と役割
4種類の歯にはそれぞれ役割があります。

<切歯>
人でいう「前歯」のことを指します。食べ物を口に入れる前に切り裂く働きもありますが、物をかじったり、毛づくろいをするときにも使います。
<犬歯>
肉食の動物では特によく発達している歯で、物をしっかりくわえたり、引き裂くときに使います。
<前臼歯・後臼歯>
人でいう「奥歯」のことを指します。前臼歯はややせまい間隔で、でこぼこした列になっています。このでこぼこが食べ物をしっかり噛み切る、切り取る役割をしています。後臼歯は食べ物を細かくしたりすりつぶす役割をしますが、草食動物ほど発達はしていません。個体差もありますが、多くの犬はあまり咀嚼することなく、食べ物を丸呑みしてしまいます。


■歯の噛み合わせ
犬の種類によって理想の噛み合わせは異なってきます。それぞれの歯の役割を引き出すために、また品種によって正しい噛み合わせというものがあります。唇をめくってみると噛み合わせがどのようになっているか、よくわかります。

<シザーズ・バイト>
はさみのように上の切歯の内側に下の切歯の外側がわずかに接している噛み合わせのことです。通常の犬種はこの噛み合わせが一般的とされています。
<レベル・バイト>
上下の端と端がペンチのようにきっちり噛みあう噛み合わせのこと。水平咬合または切端咬合とも言います。
<オーバーショット>
上の切歯が下の切歯より前に出すぎて触れ合わない噛み合わせのこと。
<アンダーショット>
下の切歯が上の切歯より前に出すぎて触れ合わない噛み合わせのこと。パグやシーズーはこの噛み合わせが一般的とされています。

犬のデンタルケアについて

■歯の病気について
動物病院に来院する犬の半数以上に見られる歯の病気が歯周病です。歯周病とは歯垢、歯石中の細菌が生産する毒素によって歯周組織が破壊され、最終的に歯が抜けてしまう病気です。
その他、歯周ポケット(歯と歯茎のすき間)に溜まった細菌により歯肉に炎症を起こす歯肉炎や打撲や固いものをかじることで起こる歯髄炎などが挙げられます。


■歯の健康のために
歯を健康でいるためには、各家庭におけるデンタルケアと定期的な口腔内チェックが必要です。
歯周病は歯垢や歯石が原因となって起こります。歯周病予防のためにプラーク(細菌の塊)を作らないようにすればよいのですが、それはなかなか難しいことです。プラークの増殖を抑え、歯の健康を維持するために最も効果的な予防法が歯磨きです。歯を健康に維持するために歯磨きを習慣化していきましょう。


■上手な歯磨き法
仔犬に頃から歯磨きを習慣づけておけば、デンタルケアはそんなに難しいことではありません。
【ステップ1】
まずは口の周りを触ることから始めましょう。触られても嫌がらないように毎日少しずつ時間を増やして徐々に慣れさせていきましょう。口の周りを触られることに慣れてきたら、指ブラシ(もしくは指にデンタルガーゼを巻いたもの)に歯磨きペーストを少量のせて味見をさせてあげましょう(歯磨きペーストは犬用のものを選びましょう)
【ステップ2】
指ブラシに慣れてきたら、少しずつほっぺたに沿って奥の方まで指を入れてみましょう。口の中に指を入れても嫌がらなくなったら、犬用のヘッドの小さな、毛の柔らかい歯ブラシを使ってみましょう。
【ステップ3】
本格的に歯磨きをしてみましょう。まず前歯(切歯・犬歯)から歯ブラシで円を描きながら歯と歯肉をマッサージするように磨きます。前歯に慣れてきたら奥歯、歯の裏と進めていきましょう。

嫌がっているのに無理やり歯磨きをしてしまうと、歯ブラシを見たとたん逃げてしまったり、歯を触らせてくれなくなってしまうこともあります。その子その子に合わせて焦らずゆっくりと慣れさせていきましょう。

まとめ

ペットの歯のケアは飼い主さんもペットも慣れるまで時間がかかる、根気のいることかもしれません。しかし、歯ブラシをはじめ正しいケアをして口腔内をいつでも清潔にすることがペットの健康へとつながります。



町田森野プリモ動物病院
院長  三浦貴裕  

JPR

注目のキーワード

  • ニュースリリース受付
  • イベントカレンダー
  • ペット業界マップ
  • メルマガ会員登録受付