動物との共生を考える連絡会とヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)は、科学上の目的のために利用される動物に関する3R(※)の理念が提唱されてから60周年に当たる今年、動物実験代替法の研究者や実験動物の専門家のなど、動物実験の課題に関する様々な関係者が執筆した記事を収載した新たな資料集『資料集:動物実験のあり方を考える』を公表しました。
(※)3Rとは、動物実験の「代替(replacement)、削減(reduction)、苦痛の軽減(refinement)」
動物との共生を考える連絡会とHSIは、今年成立した動物の愛護及び管理に関する法律(以下、動物愛護法)の改正に向けて、所轄省庁や国会議員に対して共同で働きかけを行ってきました。
改正動物愛護法には、附則において実験動物について引き続き検討する旨が含まれており、動物との共生を考える連絡会とHSIは今回の改正後も引き続き、関係者に対して働きかけを行い、社会の啓発を行うために共同作業を進めています。
資料集には、アメリカやヨーロッパを始め、世界各国における動物実験に代わる動物を用いない研究・試験方法などを促進・義務化するための法令や政策について、包括的な解説を提供する記事も含まれます。
このような政策上の取り組みに共通するテーマとして、代替法の利用の義務化(3Rを法令に組み込む)、科学的に不必要であるとみなされる動物の利用の禁止(化粧品の動物実験など)、そして動物の利用の代替と削減を達成するための指標やタイムテーブルの立案などが、世界的動向として見られることが指摘されています。
動物との共生を考える連絡会の青木貢一代表は、次のように述べています。
「本資料集は、世界各国の規制の状況や、動物実験や実験動物の関係者のそれぞれの状況や立場を概観するものです。先の動物愛護法改正において、実験動物について検討を続ける旨が附則に含まれましたが、様々な角度からの現状に関する情報をまとめたこの資料集が、すべての利害関係者が参画できる健全な対話のきっかけになればと願っております。」
HSI研究毒性学部門副部長のトロイ・サイドルも、次のように述べています。
「世界中の多くの国が、動物実験にかかわる規制や、動物を用いない最新の科学技術の取り入れを促進するための法令を設けており、この資料集により、このような世界的動向に関して日本の関係者の皆様に最新の情報を提供できればと思っております。このような規制の動向の一例が、化粧品業界に起こっている変革です。現在、既に39の市場で化粧品の動物実験の実施や動物実験された化粧品の商取引が禁止され、アメリカやカナダをはじめとしたその他複数の国でも同様の法案が検討されています。これらの規制は、ヒト生物学を基盤とした動物を用いない代替法に移行する原動力となっているのです。日本の関係者にはぜひこの資料集を、改正動物愛護法の附則にかかわる今後の議論の糧にしていただければと願っております。」
資料集は、今後随時関係者に直接手渡される予定です。
尚、一般の方にも無料で下記URLから全文をダウンロードすることが可能です。
https://www.dokyoren.com/191023/
■動物との共生を考える連絡会(略称 動共連)
「人と動物が共に幸せに暮らせる社会づくりを目指す」という趣旨に賛同した団体・法人・個人の連合体であり、「動物の愛護および管理に関する法律」を国民に周知し、同時にこの法律をより良いものに改正するために、管轄官庁や行政自治体、国会議員などへのロビー活動などを行う連合体です。
ウェブサイト – https://www.dokyoren.com/
■ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(Humane Society International, HSI)
HSI は 25 年以上にわたり、科学、アドボカシ―、教育及び実践プログラムを通して全ての動物の保護に取り組んできた、世界最大級の動物保護団体です。
コンパニオン・アニマルや野生動物以外に、実験動物や農業動物の福祉の向上にも取り組んでいる数少ない動物保護関連の国際的NGOです。
現在はオーストラリア、ベルギー(EU 事務局)、カナダ、コスタリカ(中南米事務局)インド、 南アフリカ、イギリス、ベトナム及びアメリカ(HSUS)に事務局を持っています。
「世界中の動物に畏敬の念を示し、動物虐待に立ち向かう」
ウェブサイト – hsi.org/